パルテヱル物語〜プロローグ〜
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大正のとある時、
緑深い場所に由緒正しき小さな女學校がありました。
元より華族の令嬢が勉学や花嫁修行に励むために創立されたのち、今では多くの女生徒がその門をくぐるようになりました。
この學校では
下級生が上級生を敬い、
上級生が下級生を正しき道へと導く、いわゆる姉妹制度が存在します。
なにかと噂話やおとぎ話を好む生徒の間では、姉妹(『エス』)のことを「ブーケ」と呼ぶ習慣があります。
まるで違う種類の花が寄り添い一つの花束となる様子に例えて、いつの間にか定着した言葉のようです。
毎日のように顔を合わせ、少女達だけの穏やかな空間で同じ廊下を歩き、筆を走らせ、庭に咲く花々を眺め......、
親密な時間を女學校という閉ざされた空間で過ごすことで、恋仲になっていく生徒達もいるとかいないとか。
他所の家に嫁ぐ前のそのわずかな一時の春を、どうか過ぎないでと願うようにーー。
さてここからは生徒一人ひとりに目を向けてみることにしましょう。
鮮やかな花びらを散らすような笑顔の裏に、隠れた陰を見つけ出すやもしれません......。
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